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『ドーン・オブ・ザ・デッド』感想

cry_condor2004-05-16


 書くまでもない事ですが、『ゾンビ』(原題"Dawn of the Dead")のリメイク版。
 『イノセンス』が作られれば『アップルシード』が急に作られたりする昨今、『テキサス・チェーンソー』に続いて………と疑いたくなってしまうのはB級ホラー物の性でしょうか。まさに、あの世に過去の作品があふれると、過去の作品がよみがえって現世を歩くというのはホラーに限った話ではないようです。

 前作『ゾンビ』はいわゆる「社会派ホラー」で、荒唐無稽な展開をわざわざアメリカの消費文化と結びつけて描くところが非常に奇妙な味わいを出していました。よくよく観ると展開なんか不自然きわまりないんですが、そこがいい。

 そして、今作。オープニングは非常にいいんですよね。
 特に、サラ・ポーリー演じるアンがパニック状態になって車で走っている所を車で俯瞰するシーン。あちこちで黒煙、というパニックシーン。
 『シャイニング』のオープニングもただ車が走っているだけで怖い、というものでしたが、今回も車社会アメリカ、何よりも「これはアメリカでしか絶対に撮れない」という前作のショッピングモールシーンを継承していて好ましいものがあります。

 ただその後がなぁ………思うに、監督が敵を人間でなくゾンビだと固定したという時点でこの作品の失敗が決まっていたと思います。
 前作のテンポの悪さからくる不愉快感と今作の(井上主朗さんも書いていたけど)カット割りを知らんのかという不愉快感は質が違います。前作のイライラはシーンではなく、画面に映し出される人間そのものに対する憎悪だったんだなぁと今作を観て気がつきました。計算ではやっていないんでしょうけど。

 今作もショッピングモールに入ってからグダグダなんですけど、それが安っぽい海外ドラマの「人間模様」にとどまっているのが何とも唯一の?同胞撃ち合いシーンも(ネタバレになるので書けませんが)モンスター色の濃いシーンを出した後なので、さほどショックにはならない。

 救いは必死さかなぁ。
 最初にリメイク話が出たとき、CM監督だと知って「誰だそれ」とかメチャチクャ書いていましたが、「ゾンビ映画が作りたかったんだよ!」という勢いは『28日後..』(監督:ダニー・ボイル)より感じました。全力疾走ゾンビはあっちが先ですし、ゾンビ爆破のシーンはゲーム『バイオハザードアウトブレイク』のシナリオ#1「発生」にかなり近いものがありますけど。
 紀里谷監督が『CASSERN』を撮りたかったという以上に、それは感じます。

 ヒロインのサラ・ポーリーがまた微妙なキャラなんだよな。
 悲しみとか、少女性とか、女であることとか、それらを脇役がとってしまっているので、オープニング以外いまいち立ち位置が見えにくい。
 とはいえ、いろんな出演オファーを断っている割には演技力かなりある女優さんだと思いますので、もっといろんな作品に出てほしいですね。

 サバイバルの困難さを作業によって見せないという(たまにある作業もみんな嬉々としてやっているので悲壮感がない)最大の欠点もありますが、98分ですし、お暇な方はどうぞ。