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F・ポール・ウィルソン『闇から生まれた女』(扶桑社ミステリー)



闇から生まれた女〈上〉 (扶桑社ミステリー)

闇から生まれた女〈上〉 (扶桑社ミステリー)


 皆様こんばんわ。「読書感想しりとりリレー2006」のお時間がやってまいりました。
 毎度毎度、遅れのお詫びを書くのもどうかと思っているのですが、今回はあまりにぶっ放し過ぎました。申し訳ないです。

 毎度のご挨拶です。この「読書感想しりとりリレー2006」では海外もの主義という事で海外作品のみを紹介させていただいております。今回は「や」で来て一瞬、迷ったのですが「闇」で始まる作品って結構、多いものですね。

 さて今回は私の好きな作家の一人、F・ポール・ウィルソンであります。
 となると、新刊も出たばかりだし「始末屋ジャック」シリーズ………といきたい所なのですが、諸事情ありまして今作を選ばせて頂きました。

 F・ポール・ウィルソンについて簡単に紹介させていただきます。1946年ニュージャージー生まれ。医者(家庭医)を開業しつつ、作家として活躍中。日本でもファンが多く、邦訳がいろいろ出ています。
 医者だったら医療ものサスペンスなどを書きそうなものですが、そこがF・ポール・ウィルソンの面白いところで、デビュー作がSF、現在はモダンホラーの書き手として知られています。
 私がF・ポール・ウィルソンについて知ったのは、変な話ですがTRPG『ナイトメアハンター』(現在では絶版。続編『ナイトメアハンター・ディープ』が製作されているらしい)のルールブック上だったと思います。
 そこで凶悪な吸血鬼の出てくる小説の一例として、『ザ・キープ』が挙げられていました。
 この『ザ・キープ』は1984年に角川文庫から『城塞(ザキープ)』として発行されておりまして、私が高校生の頃には古本屋に行けば上下巻どちらかはほぼ確実にある文庫の一つでした。
 実はその後、絶版になってしまったのですが10年後の1994年、扶桑社ミステリーとして『ザ・キープ』のタイトルで復刊しました。こちらは、現在でも入手可能です。
 『ザ・キープ』は1981年に作者がはじめてホラーに挑戦した作品で、マイケル・マン監督が映画化しました(1983年アメリカ。出来を見て作者がメッチャ怒っていたらしいですが)。いわば出世作
 内容は第二次大戦下、ルーマニアトランシルヴァニア城塞に迷い込んだナチス・ドイツの親衛隊と邪悪な存在の死闘を描く、というもので、設定だけ聞くと漫画『ヘルシング』みたいですが読んだ当時はどうも不満な読後感でした。丁度、S・キングの『シャイニング』を読んだときと同じで、設定と細かいディテールはいいんだけど、話がどうも善悪二項対立になってしまうのを受け入れられないという感じ。
 当時はホラーに出てくるモンスターに対して理想が高かったのでそういう感想だったのでしょう。実はそれから再読していないので、今読むと感想も違うのかもしれませんが。

 そんな不幸な出会いをしたF・ポール・ウィルソンですが、その後いろいろと読んでいくと人物描写のたくみさとストーリーテリングに魅せられて現在ではお気に入りの作家の一人です。
 前置きが長かったのですが、本作はシリーズの一つではないという事でご紹介。
 夜のマンハッタンで、真面目で有能な看護婦ケリーがビルから身を投げて自殺。双子の妹カーラは姉の意外な一面を知らされるが………という今作は「心理サスペンス」と裏表紙に書いてあります。念の為、書いておきますと個人的な分類ではサイコホラーとなると思います。
 そうなると「双子が多重人格だとかいうネタだろ?」と思ってしまいますが………それがF・ポール・ウィルソンのひねりを入れた作風のポイントでなかなか読めるものに仕上がっております。
 スリリングな心理的やり取りを期待したり、うっかりミステリだと思って読んでしまった人は途中で放り投げてしまうかもしれませんが、そこそこ意外なオチもあるし、ホラーファンなら読んでおいていいのではないでしょうか。しかしゴツいクリーチャーも出てこないので、F・ポール・ウィルソン作品としてはけっこう凡作(と、書いてファンを増やすようにしておこう)。
 あとちょっとアダルトなネタも多いんで、そういうのがダメな人は要注意。

 作家の紹介に始終してしまいましたが、次こそは『マンハッタンの戦慄』あたりを紹介したいです。
それでは次のあちゃぞうさん、「な」でお願いします。