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『殺人の追憶』感想

 ロフトプラスワンの3/17イベント『テキサス・チェーンソー』公開記念&『実録殺人映画大画報』発売記念「映画で語る実録殺人鬼たちの夕べ」で前売り券を買ったこの映画。実は興味半分くらいだったんです。
 これが大当たりで。「『KILL BILL』は1観てなかったしなぁ、でも『CASSHERN』は賛否両論だし、何観に行こう?」という人に今、お勧めなのがこのサスペンス。『MAY(メイ)』といい、最近は当たりが多い気がしますが。おっと『エレファント』もいいけどね。

 そのテの話が好きな人にもあまり知られていないようですが、華城(ファソン)連続殺人事件は86年から91年の間に10人が殺されまくったのに未だに犯人が捕まっていないという事件。第8の事件までは現時点で既に時効。
 2〜5番目の犯人は全員赤い服を着用した女性であったり、被害者の衣服がきちんとたたまれていたりと異常な点が目立つ割には犯人逮捕に至りませんでした。
 実は当時、政治的な事情で夜間灯制がされたり機動隊がデモ鎮圧をしたりという事情のために、個の殺しより国家が大切だったという事情がありました。そこをついてあざ笑うかのように連続殺人を成立させてしまう犯人と、刑事の焦燥感がダイレクトに伝わってくる、このもどかしさ、イライラ感は見事です。

 何しろ冒頭部分で向こうの(古い時代の)ステロな刑事として描かれるソン・ガンホの熱演が凄い。 怪しい奴を観たらまずとび蹴り。それが後にソウルからやってきた応援の刑事だと判明してもあまり悪びれない。脇をかためるチョ・ヨング役のキム・レハも容疑者をメッタ蹴り(こいつのとび蹴りシーンあり)。証拠の捏造なんて朝飯前。おいおい、これ向こうの人は怒らないか?という、笑っていいんだか悪いんだか解らないシーンが満載の中で進む骨太のストーリー。

 「殺人者はあなたの隣の人間で、あなた以外の全てである」という近代スリラーのパターンに対し、エモーショナルな演技でそれを包むという離れわざをやってのけた所もさる事ながら、映像と音楽がついていくあたり特筆すべきものがあります。

 音楽は邦画『アナザヘヴン』『あずみ』を担当した岩代太郎。パンフによれば、『るろうに剣心』の音楽に注目した監督から依頼があったとの事。題材からは意外な感じがしますが、ポン・ジュノ監督は日本のアニメ大好きっ子らしい。

 タイトルの意味が解るラスト。
 現実と同じく、犯人が判明することもないのですが、この映画の余韻はここ数年で感じたことがない代物です。『コンクリート』もこういう感じだったら公開しても良かったかもしれませんが、ありゃ遺族に了承とってないしなぁ。
 という訳で、もうすぐ終了のような気がしますが、劇場に確認の上、ぜひ。