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A・E・ヴァン・ヴォクト『宇宙船ビーグル号』(ハヤカワ文庫SF)

cry_condor2006-10-09



宇宙船ビーグル号 (ハヤカワ文庫 SF 291)

宇宙船ビーグル号 (ハヤカワ文庫 SF 291)



 皆様こんばんわ。「読書感想しりとりリレー2006」のお時間がやってまいりました。
 えー、ぶっちしたと思われるでしょうか。していません。本当はいつアップだったのか思い出せないぐらいブッ放しましたけど。またか。そうこうしているうちに今年も終わっちゃいそうです。

 毎度のご挨拶です。この「読書感想しりとりリレー2006」では海外もの主義という事で海外作品のみを紹介させていただいております。今回は「う」で来てそろそろSFをという事で『宇宙船ビーグル号の冒険』はアウト、なら『宇宙船ビーグル号』………ところがお題を送った後に、本が買えないのなんのって。『ウは宇宙のウ』とか買ってこれでもいいかとか思っていたんですが、字だけあってて本は違う、っていうのがいいのかどうか解りませんでした(駄目だろ)。
 本が見つからなかったので買いなおしたのですが78年に出ているハヤカワ文庫版、2002年でたったの十刷なのですね………読まれていないもんです。

 ワールドコン2007もいよいよ来年、という事で古典である今作をご紹介します。宇宙SFというと宇宙船、宇宙船というと未知なる生物との出会いですね、やっぱし。最近はいろいろとSFもヒネらなければならないので、こういう作品を目にすることも少なくなりましたが、一読しておくべき作品ではあります。
 古典というとハードで緻密な設定がさぞかしあるに違いない、と思われがちです。確かに、この作品もハードな部分がありますが、割といい加減な所があったり、訳者あとがきにもあるようにハインラインアシモフに無い良さが目立ちます。
 もともとアスウンディング誌に発表された中短編をまとめて長編にしたものでして、やっぱり面白いのが冒頭の作品。クァールという宇宙生物と乗組員の死闘が描かれる訳ですが、当時では珍しく宇宙生物からの視点で描かれており、これでヴァン・ヴォクトは華々しいデビューを飾りました。

 ここまで書くと、なんだそんな事かと白けるかもしれませんが、これ1950年の作品なのです。
 戦後すぐにこんなん書いていたのが世界にいたのか!というあたりが個人的には非常に嬉しくなり、やっぱりSFって凄いなと思う所です。

 二編目の宇宙生物イクストルが出てくる話も冒頭部分と同じなのですが、映画『エイリアン』の元ネタ(確か作者が裁判起こしたと思う)と言える作品。その後がややトーンダウンしていくものの、人間の内部が描けていない割に暴力的な部分はあるという、ちょっと珍しい作家性を保った展開が続き、今読み返すとやや面食らいます。
 船員の権力闘争の部分は、「人間の基本的な問題は解決された」とされている『スター・トレック』の設定に違和感を覚えた身としてはほほえましい部分。もちろん、全然いらないだろうと言われればそれまでなんですが、人間をどう扱うかという事に対して作者の苦労が忍ばれる部分でしょう。

 登場人物にいまいち感情移入できそうに無いとか、主人公エリオット・グローヴナーのネクシャリズムに対する傾倒が科学バンザイみたいで鼻につくとか、いろいろ問題はあるんですがSFに抵抗が無くて未読の場合は前半だけでも是非。