Radio CON$

CON$のブログ。アニメとかホラーとかレトロゲームとか好き。

『ビッグ・フィッシュ』感想

cry_condor2004-05-23


 あなたが行きつけのレストランに、いつものメニューを頼むとしよう。
 『刑事コロンボ』をまねて、たとえばそれはチリであるかもしれない。
 それが少し薄味だったらあなたはどうするか、どう考えるか?
 チリソースを頼みながら、コックがこの世の珍味………人生の珍味を味わい、自らの手による味に情けをかけたと考えるかどうか。

 『ビッグ・フィッシュ』を観終わってまず思ったのはそんな事でしょうか。
 ティム・バートン監督作品なんてそのファンしか観ない(要するに初日だけ超混みのジョン・カーペンター作品と同じ)はずなのに、どうしたんだ?と思ってしまうんですよね。 前評判は非常に良いと聞いていて受けた印象がこれという事は、私が幼稚すぎるという事なんでしょうか?
 『ファーゴ』を観た直後に近いこの感触。いや、『未来は今』をコーエン兄弟監督作品と期待して観に行った後に似ているか? 『ファーゴ』も観て4年ぐらい経ってからその良さがわかったので、この作品もそうなるのかもしれませんが、ティム・バートン監督に我々が求めていた視点とは一体何なのか?を問い直す作品になっているのは間違いありません。
 これから観る方は、是非そのあたりを覚悟して観て頂きたいところです。
 ただ、話の作り自体は滅法うまいんですよね。映画という虚構の枠組みで、虚構(ホラ話)に主人公が虚構に取り込まれてしまう、というこの構造。
 これは海外長編作品でこそぐっとくる没入感でありまして、是非小説で………と思ったらこれ小説が原作なのね。作者はダニエル・ウェレス。ロアルド・ダール(『チョコレート工場の秘密』)みたいな話なんでしょうか?

 キャストの中で光るのはやっぱりダニー・デビート。サーカスの座長で、『バットマン・リターンズ』にも出ていましたね。『レザボア・ドッグス』のスティーヴ・ブシェミも好演。そして、ユアン・マクレガー。やっぱり彼は『スター・ウォーズ/エピソード2』なんかには出てはいけなかった俳優だと思います。こういう役どころを演じるのに嫌味があまりない。

 フリークスの邂逅や変なシチュエーションなど、所々にバートン節は光るものの、我々がティム・バートン映画に何を観ていたか? 作家性とは一体何か?を図る意味でこの作品は、全てのティム・バートンファン必見の映画です。そのほかの方は、まぁ、興行成績が悪そうなので、『トロイ』が混んでいたらこっちを。