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CASSHERN(キャシャーン)感想

 さて今週の映画は紀里谷和明(きりやかずあき)監督『CASSHREN』(キャシャーン)(2004年・日本)です。

 世界大戦は50年も続き、世界は大亜細亜連邦共和国ヨーロッパ連合という、ふたつの陣営に分かれ、大亜細亜連邦はユーラシア大陸を支配していた。
 しかし、その勝利で得た物は人心の荒廃に、化学兵器、細菌兵器、核がもたらした薬害やウィルス、放射能などの後遺症と荒れた大地だけ。
 第七管区のテロリストの抵抗が激しい中、医療対策として東博士(寺尾聰)はどんな臓器も作ることができる「新造細胞」を発見する。博士の息子、東鉄也は父親に反発し戦場に赴くが命を落とす………。


 『CASSHREN』は来週24日から全国公開の映画です。名もなき人さんから試写会の券があるという事で、中野サンプラザまで行ってまいりました。
 私は常日頃から、世間に適合して生きていきたいと思っています。だから今日も、試写会に誘っていただいた名もなき人さんに感謝の意を表明して、観終わったあと、それがどんな映画であっても褒めちぎって相手に不快な思いをさせないようにしようと誓って家を出ました。それはもう社会常識というか、はっきりいってタダ見している身分なのですから当然の事でしょう。まぁ百歩譲ってひどい映画だったとしてもお世辞を言うくらいの社会的分別を私も持ち合わせています。人間として当然のことです。

 12時にJR中野駅北口で待ち合わせまして、会場に行く事にしました。すると驚いたことに、仕事上の重要な取引先の人が待ち合わせで集まっているではありませんか。業界的にそのテの人が大手出版社に無理やり券を渡されて行くという事はよくある話なので、それなんだなと思いました。
 こう見えても私は営業マン。心が100%接待モードにあるので、これはもう何がなんでも褒める体制で臨み、今後の営業トークに繋げようという意気込み満々です。だいたい、名もなき人さんとの趣味関係以上の大義名分が出来たので鬼に金棒といった所でしょう。12時に会場に行くと、試写会だというのに長蛇の列。皆さんもこの『CASSHREN』を楽しみにしてきたのでしょう。
 私も明るい顔で「いやー、『CASSHREN』けっこう面白そうですよね。まぁ一部のオタはぶーぶー言うでしょうけど、興行的には大成功間違いなしじゃあないですか? ハハハ」と名もなき人さんに話しかけます。
 こう見えても、私はいい所さがしに関しては自信があります。今やゴダールの映画でも絶賛できそうな勢いで、妙なハイテンションな私を見て名もなき人さんは「この人、躁鬱の薬を今日だけ飲み忘れてきたんじゃあないのか?」みたいな視線を送ってきますが、気にしない。まぁ実際飲み忘れましたけど。終わったら映画を絶賛するんですから(出来はどうにせよ)、彼/彼女も悪い気分はしないでしょう。

 開場して、前説の後に何と紀里谷和明監督の舞台挨拶が! 思ってもいなかった演出に観客一同、大感激です。私も大いに盛り上がって、見てもいない『CASSHREN』に対して評価がぐんと上がりました。私が今、芥川賞直木賞を総ナメにするとしたらそのタイトルは「絶賛する準備はできていた」で決まりでしょう。さて、2時間20分、もう褒めるだけのために観るぞ! え? PAGEの感想? そんなんどうだっていいんですよどーせ一部のゴミしか観ていないし。それよか私には世間と適合する事の方が重要なんですよ。私はこの感想で一気に非モテ系B級テキストサイトから脱出してネゲット目前ですよ。チャオ!


 鑑賞後。
 中野の「エクセルシオール・カフェ」で口角泡をとばす痛々しいオタの姿が見受けられました。話しているのは当然、私ですが、映画がすっごく面白かったらしい名もなき人さんは今にも帰りたいような表情で必死に弁護しています。
 前述の神々しい意識はどこへやら、自分にしか理解できない審美眼を振りかざし、周りの人にも大迷惑な彼。いや、私なんですけど。
 どうして、人はこう過ちを繰り返すんでしょうか? どうして、オタは演出がなっていないとかアニメではこうだったとか言うのでしょうか? どうして、脚本がヘボ過ぎるとか監督は死んだほうがいいとか独善的な言葉を吐くのでしょうか? なぜ、人を裁くことができるのでしょうか?
 もう一度言います。
 なぜ、オタは人を裁くことでしか生き続けられないんでしょうか?