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スティーヴン・キング『死のロングウォーク』(扶桑社ミステリー)

cry_condor2006-05-29





 皆様こんばんわ。
 何と言っていいものか………数日前からこれの内容を考えていたんですけど、まさかこういう日に書くことになるとは思っていませんでした。いや、これは個人的な感傷でありまして、読んで下さっている皆様には関係のない事ではあります。
 さて、改めていつもの調子に戻って書かせていただきますと、「読書感想しりとりリレー2006」のお時間がやってまいりました。今回、和泉さんから「し」でお題を頂きました。
 しりとりなので何が来るか解らないという楽しみがありますが、今回はほっとしたような………「シ」もそうですけど、「ク」とか割と好みです。


 そこで今回は「いやいやそんな直球な」「でも次に同じお題が来るかどうか解らないし」と脳内会議の末に決定したS・キングの『死のロングウォーク』に決まりました。
 もはや解説するまでもありませんが、S・キングが別名義であるリチャード・バックマンとして1976年に書き上げられたのがこの作品です。
 S・キングが当時なんと大学一年生だった事に衝撃を覚えると同時に、その内容についても心に刻み付けられている、お気に入りの一冊。


 あらすじは以下の通りです。
 舞台は近未来のアメリカ。 十四歳から十六歳までの少年百人を集めて、「ロングウォーク」という競技が行われる。ただ道をまっすぐに歩くだけ、というものですが、歩行速度が落ち、三回以上警告を受けたら即、射殺。
 そうして最後の一人が残るまで行うという文字通りの死のゲーム。レイ・ギャラティはこのゲームに参加し………。


 『バトルロワイヤル』の元ネタみたいな話です。一応は主人公視点で書かれるので、出オチみたいなものですが、同じキングの「オチは解っているんだけど続きを読まずにいられない」名作『刑務所のリタ・ヘイワース』同様、文庫本405ページを読ませます。それもロングウォーク開催の朝から始まって、終わりまでを描くだけで。
 道中、当然の事ながら「ロングウォーク」の参加者がバタバタと死ぬわけですが、途中は少年たちの話と(レースの目的と結末を考えれば)些細な行動が描かれるだけ。加えて、世界設定の説明もほとんどなし。そもそもどうして「ロングウォーク」が行われるのか、レースの監視者である「少佐」とは何ものなのか、ほとんど説明がありません。
 こんなん小説になりようがないじゃん、と思うんですが、これをやってのけてしまうのがキングの筆力。そう言ってしまってはベタすぎて感想でもなんでもないのでしょうが、そうとしか書きようがありません。


 加えて、個人的にこの結末が大好きなのです。『クージョ』とか、他のキング作品のラストも好きでとても一番は選べないのですが、かなり高いランクにあります。
 何年経っても結末を思い出さずにいられない最後の数ページは、こうやって作るのかと初読の時に茫然としていた思い出があります。
 ギャラティが感じた孤独。
 だれしもそれに陥る事が簡単なだけに、心に残るのではないでしょうか。


 やや蛇足めいた補足をしておくと、キングの長いストーリーテリングというか冗長性に慣れないと、中盤が面白いと感じられないかもしれませんので、ある程度S・キングにどっぷりと漬かってからトライする事をお勧めします。
 それでは次のあちゃぞうさん、「く」でお願いします。