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CON$のブログ。アニメとかホラーとかレトロゲームとか好き。

『江戸川乱歩と大衆の20世紀展』

 何とか時間をとり、池袋・東武百貨店本館10階で行われている『江戸川乱歩と大衆の20世紀展』を観に行きました。
 そんな暇があるなら球撞きの練習をしろという話がありますが。
 絵画の展示展ではないのですぐ観終わるだろうと思っていたのですが、さにあらず。

 当時の文献を読むのがこんなに楽しいとは。ガラスケースに鼻をつけんばかりにして読んでいたので、後ろの皆様にはご迷惑をおかけしました。
 江戸川乱歩はとても収集癖のある人物で自分に関する物は何でも集めていたんですねえ。ご存知の方も多いと思うのですが、「貼雑年譜」という自分に関するスクラップブックが凄い。ちょっと自分名が出たラジオの新聞紹介記事までバッチリ切抜きしてあります。
 
 私と江戸川乱歩の出会いといえば、やっぱりポプラ社(だったか?)の少年探偵団シリーズですかねぇ。
 少年の頃から、私はホラー者だったりした訳なんですが、図書館で見た表紙の怖さがよかった。『緑衣の鬼』とか『電人M』とか、もうメチャ怖い。
 お年玉で兄と一冊ずつ買いに行って、兄はちょっと大人だから『三角館の恐怖』みたいな本格モノを買うわけですよ。
 私は幼稚で恐怖大好きだから、『魔術師』とか買うわけですね。
 後から、『三角館の恐怖』の方が面白かったので、交換してくれとか泣いた思い出があります。
(それにしても、『三角館の恐怖』のエレベーターのトリックで明智小五郎が悩むシーンが良かったなぁ。あのトリックには感動した。今観ればたいしたことないかもしれませんけど)

 そんな明智小五郎も、大人になってから別の小説を見ると、小林少年と出会うずっと前の歴史があるんだな、と知って興奮しましたね。
 今回の展示では、『D坂の殺人事件』の草稿があったんですけど、赤の入れ方が面白いです。完成稿とぜんぜん違うの。

 「浅草と乱歩」のコーナーもよろしかった。乱歩が書いた浅草の地図がいかす。Tシャツにしたいぐらいです。
 乱歩の青春時代の話もロマンがいろいろあっていい。兄弟で古本屋を営んだ話とか、鳥羽・坂手島の女教師、村山隆子にあてて書いた文章もいい。
 『恋愛疾病論』の中の「健康か病気かは、特に精神的な病いの場合は、なかなか区別しがたい」という記述には考えさせられるものがあります。

 ミステリファンからは後年の少年向け小説というのはいささか白い目で見ているのかもしれませんが、通俗とのミックス具合が自分にはグッときますね。森博嗣もそうですけど、こういうミステリの境界例に自分は引きつけられるのでしょうか。

 考えてみれば、私が日本の作家で乱歩に一目置いているのも、ミステリだけでなく幻想的な作品も多く残しているからかもしれません。

 まだまだ書き足りないのですがそれは別記にすることにして、2時間ぐらい会場にいたかも。急いで立教大学キャンパスへ。
 ここで初めて?江戸川乱歩邸で乱歩が好んで執筆に使ったという土蔵、通称『幻影城』が公開される訳です。
 私が行った時は一時間待ちでして、もうちょい遅いと二時間待ちとかもあったんではないでしょうか。
 立教大学の大講堂が待合室で、そこで一時間ばかり待たされます。個人的には、ものすごい久しぶりに大学の講義室に入ったという事で満足です。この中で、幻影城に関する映像(17分)が流されています。待っている間は何回も見る羽目になるんですが。

 さて『幻影城』ですが、ご想像通り、中に入れるわけではありません。まあ豊島区指定有形文化財にみんなでドカドカ上がりこんで階段でも折れたら大変ですからね。入り口にガラスの壁があって、ちょっとだけ中をのぞくことができるだけです。それで怒っている人もいたようですが………。
 個人的には、それだけでも感激でした。読書人の夢に、自分だけの『幻影城』を持つ、というのがあるんではないでしょうか。私も小金があったら是非作りたいですね。

 写真は蔵の裏からちょっと失礼して撮ったものです。
 夜の幻影城はその名にふさわしくそびえ立っていました。