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『スチームボーイ』感想

 6/26(土)に行われた東京・厚生年金会館の試写会で先に観てまいりました。
 一言で言うと、近年まれに見るテンポの変な映画でした。もうそれを体験するだけで、この映画を観る価値があるでしょう。自分がいかにハリウッド・カーブに毒されているか解る一作です。
 というと、バカにしているような感じですが、昔はこういう変な調子の映画がいっぱいあったものです。それを今、直球でやってしまうのが許されるのは大友克洋ならではでしょう。どこがどうとか書いてしまうとネタバレになってしまうんですが、最後のあれが出てきてからが長いトコとかもう………。
 『スチームボーイ』を観に行ったと思ったら、『ハウルの動く城』でしたよ!(結局書いてるじゃん)

 全編とにかくメカ、メカ、メカ! あとは動けばどうにかなる、偉い人にはそれが解らんのです、とばかりにメカ大連発です。予告編から「まぁ、ラピュタみたいなちょいファミリー層を狙った作品なんだろ?」と思って観に行くと痛い目を観ます。9年間の大友監督の怨念をくらうがよい。
 全ての発明家はオタ同様全く人の話を聞かないし、主人公はいなくてもいいし(あっ言っちゃった)、スカーレットは劇中で成長しないし。いや、成長しないという事で言うと登場人物は全員そうだ。9年のうちにゆっくりと歳をとり、そしてそのまま止まってしまった樹木のように。
 樹木なので葛藤もしない。台詞の上で葛藤がありますけど、本当の葛藤になっているかといえばそれもあまり無い。

 私も毒気にあてられた気がしなくもないのですが、これが大友流の「現実」という回答ではないのでしょうか? 大きくて黒くてデカい機械があったら、人間は相手の話を聞くよりもまず、その機械(デウス・エクス・マキナ?)に目を向けるのではないでしょうか。
 現実というものはそんなもので、劇中人物の言葉にならって言えば、この映画という妄想を目にさせた時点で、大友監督の目的は達成されたと言えるのでしょう。似たような映画があっても、現実を混ぜていくとこうなり、それを「実は妄想でして」と語って人に見せる。私は100%は認めたくないのですが、これが大友版エンターテイメントなのでしょう。

 7月17日より公開のこの妄想、たしか2時間9分あると聞きましたが、じっくりと腰を落ち着けてご鑑賞ください。「木を見て森を見て、その他は見ない」という近年まれに見る不思議な映画体験を、ぜひぜひ。

 ところで日記にもちょっと書いたのですが、この試写会で開始30分ぐらいで映写ミスがあったんですよ。最近めったに観られなかったのでちょっと得した気分でした。ちなみに、試写会でなくって普通の上映でこれやるとタダ券とかもらえるんですよね。いやー映写技師の人、クビになっていないといいんですが。

 参考:スチームボーイ製作ブログ
http://steamboy.cocolog-nifty.com/