『APPLESEED(アップルシード)』と『CASSHERN(キャシャーン)』、『イノセンス』はぜひこの機会に三本一緒に観ておくべき作品です。これで、アニメ/CG/SF邦画の現在が解ります。こんな機会は滅多にありませんし、後作の事も考えて劇場に足を運びましょう。そして、対話することが今後の世のためになります。たぶんね。
さて、今作はまさに『イノセンス』の対極にある映画。
最新のCG技術で士郎正宗の世界観を打ち出しながら、世界観でゴリ押しする『イノセンス』と異なり、キャラクターを前面に出す方式。しかも、それが80年代アニメ風味という感じでたまりませんね。
今回これを書くためにキッズステーションでDVDに録画しておいたOVA版『アップルシード』を見直しました。ダイダロスとかの設定は同じなんですが、サイボーグ化したブリアレオスとかはもっと自然なんですね。今作でも自然っちゃあ自然なんですが、当時はその日常感がいかにもSF!という感じで嬉しかったような。
原作原作とお題目のように言うのもアホな気がしますが、SFにおける日常感を与えてくれたのが士郎正宗の漫画だと思います。絵でおおこれはすごいやと思わせておいて、淡々とした会話の中に微妙な軋轢がノイズのようにまじっている。これがそれまで読んだ漫画と違って新鮮だったと思います。士郎正宗は自分の作り出したキャラクター性が、激しい感情、たとえばドラマティックな葛藤とかに向かない事を熟知して、物語を作っていた事を再確認。
なので、バイオロイドと人類の共存とか、それに関わるD-タンクやアップルシードといったSFっぽいギミックがあっても、キャラクター前面の今作は話が進めば進むほど薄っぺらになっていくのが観ていて辛かったような………。
原作も未完の中、よくここまでまとめたもんだとか、実は半年で作ったとか、主人公デュナンのモーションアクターが三輪明日美だとか聞くとほほーうと思うんですが、それだけでは映画は成立しませんよね。
特にキャラクターの「表情」がなぁ………技術的な問題なんでしょうが、もうちょっとどうにかならんかったのでしょうか?